つれづれなる技術屋日記

しがない技術屋。専門は情報工学で、「つれづれ技術屋」って呼んで。

節電 消費電力把握のすすめ

今回の東北関東大震災/東日本大震災の関連で”節電”が叫ばれてる。福島原発を筆頭に津波地震東京電力発電所が被害を被り、とりわけ夏の電力需要をカバーできないと思われるためだ。 ただ、電力需給の話やエアコンの設定温度調整などの話ばかりだと、現実感に乏しい気もしている。電力需給の話は、あまりに包括的。省エネの話は今まで結構聞いてて、職場などでの対応もそれなりに浸透していると思えるためだ。社会的な浸透も進んでいて、電車やオフィスビルで寒すぎることはめっきり減っている気がする。それを考えると、今回の呼びかけが今までの省エネでのそれと具体的な部分で何が違うかピンと来ない。例えば昨年の冷房温度設定から+1度に皆ができるかとか、それらにより東京電力管内で10%~20%の節電になるとの話に結びついていない気がする。 と言いつつ、ここ1週間ほど自宅でトライしたことや電力需給で調べたりしたので、ちょっと紹介しておく。(需給の観点では、国とか地域レベル→各家庭のような記述が良いんだろうけど、思いつつままに。) 1)消費電力把握 月単位-1

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左は、多くの部分をぼかしてるけど、我が家の東京電力による使用電力の伝票。薄黄色部分が、当月の使用量。正確には、計測日までの1ヶ月間の使用量。単位はkWh。 薄紫色部分が、”前年同月”の消費量。実は、これが記載されているのを最近知った。
2)消費電力把握 月単位-2

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左は、ストックしてあった使用量の伝票をもとに、経年変化を表/グラフにしたもの。Googleスプレッドを利用してるが、当然ながらエクセルとかでも可能。 夏場よりも冬場の方が電力消費量が大きい。後でも述べるけど、これは一般家庭でほぼ共通。 なお、本来は電力消費量で議論すべきだけど、それらのデータがなければ電気の振り込み料金の経年変化を調べるのも良いだろう。家計簿とか通帳の利用。(どこかに、使用量と金額の換算、特にその変化を参照できれば精度は上がる。)
3)消費電力把握 月単位-3 知り合いがTwitterで教えてくれたけど、東京電力のサービスで2年間のデータを入手できるとのこと。「電気のシェイプアップカルテ」。ただし、会員制だし、今は申込みが多いらしい。 https://www30.tepco.co.jp/dv02s/dfw/shapeup/DV02A012/DV02AETOP.jsp ちなみに、「じゃ、一般家庭の平均使用量は?」との疑問もわく。参考程度だけど、以下のサイトなどは参考になるかも。(風力発電疑問視のサイトなので、多少その前提で読んだ方が良いとは思う。) http://www.geocities.co.jp/NatureLand/9415/sikou/sikou37_ittpankatei_090505.htm
4)消費電力把握 日単位 我が家でやりただしたのは、毎日定時に電力メーターの値をメモしておくこと。メーターって、少数以下の桁は分かりにくいので、整数部分のみにするかは悩むかもしれない。ただ、我が家では寒いと2倍近い使用量に変わるので、少数以下は不正確でも構わない気がしている。 対前日で比較して、使っていたらその理由を探るという利用方法。ダイエットの方法で、毎日体重をメモする方法があって有効だけど、あの感覚。 ちなみに、1日の電力消費量の一般家庭の平均は約10キロワットとの話もある。また、年間消費電力量4,200kWhを365で割り算すると11.7なので、10キロワットは(平均値の)目安としては妥当だろう。 http://www.asahi.com/special/10005/TKY201103190098.html http://sakugen.dietco2.com/japan/ 1日10kWhを参考値として、上で述べた方法では各家庭での月当たりの消費量を1/30して対比すると、より精度の高い確認になる。
5)消費電力把握 機器単位 各機器の消費電力を把握する機械も販売されているようだ。左はアマゾンでの例。「ワットチェッカー」とか「ワットメーター」などで引っかかる。テーブルタップで、複数の機器をつなげた状態で計測するタイプもある。 ただ個人的には、個々の機器の消費電力把握よりも、まずは一家としての消費電力把握をやった方が良いとの考え。一家としての消費電力把握を行い、その後に各機器の把握を行って節電推進という流れが良さそうに思う。
6)夏場の消費電力 今回の震災に伴う節電の大きなポイントは夏場。供給が追いつかないかもしれないとの話である。ただ多少冷静に議論するには、夏場の電力消費は何処が多いのかを考えないと供給量低下に対する節電の効果が薄い。 で、上で述べた自宅の消費電力を見てみて気がついたが、夏場よりも冬の方の消費電力が多い。最初は自分(達)が寒がりなのかな位に思っていた。しかし調べてみると、ネット上の他や平均的にもそのようだ。的確なものは見つかっていないが、以下辺りは参考になる。 http://www.jraia.or.jp/product/home_aircon/select_02_04.html 以下は、さいたま市の家庭での季節別のエネルギー使用の状況。 http://www.s-c-e-c.org/activity/record/forum/2010/2010_forum_panel(energy).pdf エネルギー白書でも一般家庭での”消費エネルギー”は、冷房よりも暖房の方が多い。エネルギーの観点では、ガスや石油などの利用も考えられ電気だけでは無いが、頭の隅に入れていて良いと言える。「【第212-2-3】世帯当たりのエネルギー消費原単位と用途別エネルギー消費の推移」 (ちなみに、1 kWh = 3,600,000 J) http://www.enecho.meti.go.jp/topics/hakusho/2010energyhtml/2-1-2.html
7)1987年大停電 大停電のことを調べると、多いのは雷や人的なミス。大停電の中で需給のアンバランスにより発生したと思える代表は、1987年7月23日午後1時19分頃に首都圏で発生したものである。 http://ja.wikipedia.org/wiki/1987%E5%B9%B47%E6%9C%8823%E6%97%A5%E9%A6%96%E9%83%BD%E5%9C%8F%E5%A4%A7%E5%81%9C%E9%9B%BB ただし、他のサイトを含めてよく読むと、電力の需要自体はそれなりに把握できていたようである。問題は、昼休み後や暑くなっての冷房起動。しかも原因の主は、インバータエアコンと言われており、それ以降の機種では保護回路を設けているものが多いようだ。保護回路がないと、電圧が低下したのを(無理に)電流でカバーしようとする。一時的には過剰な電流を獲得しようとして、それが多く発生して停電を引き起こしたと理解した。 1987年の大停電を考えると、夏昼間の消費電力のピークを分散化するのは大きな課題となる。一時的にでも需要電力の想定とかけ離れると大停電の発生に結びつくし、旧タイプのインバーターエアコンもまだ稼働しているものがあると思われるためだ。 8)電力供給と気温 電力供給と気温は相関しそうなことは理解できてるが、具体的で詳細なデータをなかなか見つけられない。最近目に付いたのは以下。上の方はGoogleスプレッドでの東京電力のデータを整理したもの。下の方は気象庁の東京での気温などのデータの2011年3月分。(操作で翌月なども参照できる。) https://spreadsheets.google.com/ccc?key=0Ai5g_1GrbK1gdFZDM0tJSnZxMWwybzM5WVlOSHNpSHc&hl=en&authkey=CO3Dhc8H#gid=0 http://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/view/daily_s1.php?prec_no=44&prec_ch=%93%8C%8B%9E%93s&block_no=47662&block_ch=%93%8C%8B%9E&year=2011&month=03&day=&view=p1 これを見る限り、最低気温が10度を下回ると電力使用が相当増える感じ。夏場での具体的なデータ(特に供給電力)があれば、細部分析できるかと思われるが、探し切れていない。 以上述べたことから、今度の夏に向けては、家庭での冷房節電とか各機器の節電よりも、会社などでの冷房節電を検討すべきと考える。それもピントを絞れば、午後0時~2時といったピーク時の消費電力の抑制策。 会社やビルの設定温度もそうだが、昼休みのシフトや空調方法の再検討、冷水提供なども検討すべきだろう。昼間の電車間引き運転とか、省エネで話題となるパチンコなどの遊楽施設一時的休止なども有効かもしれない。各自の対応では、保冷性の高い水筒などもあるので、(昼間の構内/社内自販機を停止させ)朝のうちにそれに詰めておくなども考えられる。 会社やビルに関しては、社内などへの使用電力の開示/掲示も有効だろう。工場だと無災害記録の掲示などがあるが、あのノリ。構内のビルや職場毎に計測できれば、さらに有効だろう。また、「省エネ」法を一部改正してちょっとした事業者も把握するようにする方法も考えられる。(官庁への提出まで必要とするかは疑問に思えるし、大きなビル単位程度の方が良いかもしれない。) 従来の家庭主体の省エネネタの延長では、今度の夏の(特に昼間)消費電力ピークは乗り越えられないし、それの対応検討を今から行うべきだと考える。

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