しばらく積ん読状態だったけど、サムスン電子のCEO交代や、週刊ダイヤモンド2011/2/12号での”ヤメソニー”の言葉が気になって読んだ本。
韓国の経営学者の書いたものを日本語訳したものだ。サムスン/サムスン電子の事を知りたかったことと、韓国目線での両者の対比に興味が湧いて購入してた。サムスン絶賛かとも思ったが、結構冷静に分析してある(むしろサムスンに批判的な部分も少なくない)と感じた。
冒頭の方は、ソニーの不振、そしてそれとは対比的なサムスン躍進の様子が書かれている。プレイステーション開発のくだりでは、技術者の階層構造としてトップにアナログ回路技術者が位置しているなどの記載をしている。
サムスンでのSCM(サプライチェーンマネジメント)、「サムスン総合技術院」などの研究所、VIPルームと呼ぶプロジェクトチーム集結、SAPによるERP、サムスングループ統括としての秘書室(戦略企画室)などに触れている。
逆に、グループ企業間の株式持ち合い状況以外に、会長やその親族間の資産移転にも触れている。また二代目会長の李健煕(イゴンヒ)の自動車事業での失敗や、その息子の李在鎔(イジェヨン)のインターネットベンチャーへの投資失敗にも言及している。といっても、投資失敗については、企業なら大なり小なり発生していることではある。ちなみに李在鎔(イジェヨン)は、昨年12月に、サムスン電子での10何人かの社長の中の一人に加わった。
個人的に面白く思った逸話。アメリカから半導体設備を購入して工場に運搬しようとしたら、高速に入って、高速道路出口から工場までが舗装されていない道と判明。約4キロメートルのその道を、数時間で舗装したと。さらにその判断は、運搬担当の従業員であり、舗装が早く乾くように巨大扇風機まで用意したそうだ。
この本では、ソニーとの対比で、サムスン電子を真のグローバル企業になりきれていないと指摘している。また直近では、サムスン電子は、四半期で赤字計上している。これは決算公表してからは初とのこと。従って、この本が出版された頃と比較すると、躍進にブレーキがかかったことになるかもしれない。しかし、いずれにしろ、サムスン電子は気に留めておくべき超大企業には変わりがないので心に留めておくつもりだ。