IPA/SECによる「ソフトウェア開発 データ白書」は、結構前に読んでて書いておこうと思いながらも、まとめるのが遅くなってしまった。勘違いなどがあるかも知れないけど、自分なりの分析や感想を書いてみる。
この本が良いのは、毎年発行されていること。それなりの品質データが記載されていることや、FP(ファンクションポイント)とSLOC(ソース行数)の両方によるメトリクスが掲載されていることだろう。
ということで、2005年版(最初の版)を探しだし、その対比も含めて書いてみる。ちなみにP***/P***は、前の方が2005年版でのページ、後が2009年版でのページ。特に断ってない場合は、2009年版でのページである。
1)2009年版では、改良開発でのメトリクスが追加されている
これは、非常に良いこと。新規開発との対比もそうだし、今後は改良開発自体の比較も可能になる。
2)計測データ数の伸びが鈍化
このデータ白書は、旧来のデータに新規な調査結果を追加するタイプ。(細部分析すれば、新規追加分での把握な事が少なくないが。)
P13にデータの年別内訳があり、2004年の942件に対して、2008年が271件。比率も2004年 40.5% → 20.5% → 15.3% → 12.2% → 11.6% と、順次減衰している。個人的には、不景気などよりも、計測に対する取り組み意識が少し変化してる気もする。計測意識の低いベンダーとか、ベンダー内グループが少しづつ増えてきたのかも知れない。まさかと思うけど。
計測のメリットなども明らかになっているで、今後の動向を気にかけておくつもり。
3)FP利用が少し衰退
規模尺度の対比がある。 P20/P43
2004年版のFPのみ 51.1% → 2009年版のFPあり36.4%。これは結構実感とも合っている。表現が良いか分からないが、FPブームはちょっと去ったとのイメージ。
ただし、FPの場合は、計画と実績の差が少ない。P264およびP265。その点はFPの有利な点。
4)品質は確実にアップ
稼働後のバグ件数の図。 P55/P79
平均値が2004年版の40.4件 → 2009年版15.4件。標準偏差も2009年が少なくなっているし、そもそもグラフを見れば明らか。バグ件数50件以上のデータも存在するが、2004年度などのデータも含まれるのも理由だろう。個人的には、せめてこのデータ部分は年の累積棒グラフにしてもらいたい位。つまり、最近での稼働後でバグの多いデータ件数は、非常に少ないと考える。
5)ばらつきが減少
ソース行数と工数の関係など。どれが端的か悩ましいが、P67/P160など。
6)改良開発の件
データ対比で、改良開発で端的なのは、P253での新規開発とP255の改良開発の対比。改良開発の方がテストケースが増るが、バグ件数は少ない。つまり、影響部分を確実にテストしていることが伺える。
ちなみに、このデータ白書での改良開発での作成行数は、改良で追加等を行った行数。参照元のシステム(母体)は含まない。P17。
なお、ちょっと気になったのが、言語別のSLOC生産性の対比。新規開発P178と、改良開発P188を対比すると、C言語の場合に改良開発の方が高い。VBも若干高い。
すぐ後のページで業種別のSLOC生産性を示しているが、改良開発での製造業と公務は生産性が対比的に高い。その辺りが、上記C言語での改良開発における生産性の高さに結びついているのかも知れない。つまり、製造業や公務は、C言語で書かれたものを大きく改良(含む部分ペーストなど)するのではないかと。このご時世、そもそもC言語の利用というのも再考が必要と思うんだけど。 まっ、外してたらごめん。
いずれにしろ、今回の改良開発の追加も含め、データ白書は対比などで活用していきたい。