今日は、情報処理推進機構(IPA)の「プロジェクトマネジメント国際標準化フォーラム2012」。プロジェクトに関する国際規格(ISO 21500)の成立に関するもの。
今までPM学会や研究会の雑談を含め、色々聞いていた。成立したISO 21500での基本的な事項には既に聞いたことが多かったが、細部や話題となった考えで今回成立してないことも少なくなかった。その意味で、フォーラム自体で策定に関する裏話(?)も聞けて為になった。ちなみに、規格書は日本語訳でも結構薄い。邦訳版で23100円。(会社なら即買いだろうけど、自分での個人購入となると微妙な金額かもしれない。)
ISO 21500は、PMBOKでの考えが色濃く反映されている。ただし、PMBOKでの「知識エリア」を「サブジェクトグループ」と言い換えて、数もサブジェクトグループは10個としている。「ステークホルダー」サブジェクトグループが追加された。全39プロセス。他にプロセスの番号付けなど、意識体系的な側面でも考え方で異なる項も多い。
PMBOKでの、ツールと技法は考えや用語として採用されていない。PM手法や契約種の呼称もなく、特に後者は、国際規格化で共通の認識が生まれると(今回のフォーラムでも冒頭で複数人が)言っていた気がするので、個人的には拍子抜け。Work packageが無いのには、個人的には疑問に感じた。
今までの会合などで、BS6079(イギリスの標準)の関連だったと思うが「overarching」という考えが何度か出てきた。プロジェクトをより広範囲に捉えようとする考えと受け取った。ISO化の際に、それを盛り込む動きと言われていたが、今回は見送られたようだ。なお、”実行”としてexecuteを避けてinplementにしたのは、executeを「(死刑等)執行」と意味するとして使用を避けたい国が多かったからとのこと。
組織や個人に対する認証に関する記載は無い。なお講演の演題やQ&Aで、認証への取り組みが動き的にはあるようだが、どうも断言はなかった。逆に講演ではISO 9000での弊害のことが暗に出て、認証を行うとしてもISO 9000のような仕組みとは違えるのかも知れない。
今回はPC236として規格化されたが、今後TC258として、プログラムやポートフォリオなどを議論していくらしい。
フォーラムとして、質問に1時間を当ててあったのは良かったと考える。普通なら講演者の説明とか補足で時間取るけど、今回はフルにQ&A。なお、どう適用したらいいかの質問出たけど、(よく話に出る)組織体でテーラリングとか工夫が必要、PMIの商標、著作権の関係でそのまま利用できないの事などが出た。後者は、回答としては分からなくはないし会合ではよく聞く話だったけど、会場ではもう少しアドバイス的な返事があっても良かったかなという気持ちが湧いた。
なお自分として、質問したかったけど、止めた質問は以下。ちなみに最初挙手が少なかったらと質問しようと思ってたら質問がいくつか出てきたためと、何かの会合とかで聞けばいいやくらいの気持ちだったため。
・説明での規格化のメリットとして用語が共有化できるとの事だったけど、今回契約関係の用語は範囲外である。TC268に引き継がれる?・契約に多少関係するが、日本のITシステム開発で請負契約が多い点は稀有に映ると聞いている。TC236も含めると、日本での商習慣で気にしておくべき事はあるだろうか? あるいは、ISOでは各国の商習慣を包含する考えが多いのか少ないのか。
他でもそうであるケースが多いが、国際規格の類は、結局差し障りのないところに落ち着くように思えた。開発プロセスとかだと、どうしてもそうなるのだろう。ただし、途中経過を含めてウォッチしておくことは必要と感じた。