つれづれなる技術屋日記

しがない技術屋。専門は情報工学で、「つれづれ技術屋」って呼んで。

日経SYSTEMS 1月号「さらば失敗プロジェクト」

日経SYSTEMSの「さらば失敗プロジェクト」、知り合いのつぶやきから数日前に知ってたけど、今日雑誌の方を細部で確認。

いくつかの事例が書かれたルポの方は(失敗例として)頷ける部分もあるが、問題は最初の方の数値の列挙。「プロジェクトのうちに94.5%に深刻な問題が発生して、そのうち89.9%が同じ失敗を繰り返している」としている。

0.945*0.899=0.85 で、前プロジェクトのうち85%は、同じ原因で失敗していると読み取れる。

今となってはアンケートの原文がネットにないので何とも言えないが、今回の記事の本文でも質問は「あなたが現在または直近で関わったシステム開発プロジェクトについてお聞きします。そのプロジェクトでは、右に挙げる問題が発生しましたか?」。(右に挙げる)問題として、スケジュール遅延などがある。本アンケートは、ネットのITpro上で行ったものでその記事は以下。

http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/Watcher/20111024/371258/

有効回答は73。上のURLでの記事で分かるように、そもそも、問題意識を持った人が回答したと言える。しかも、今回の記事では、問題がある→深刻な問題発生となっている。(アンケートの設問に、”深刻な問題”とあったのなら撤回すべきだろうけど。)

プロジェクトなので、あるいは定常の業務でも、日々問題は発生する。それを解決していくのが、ある意味プロジェクトマネージャーの仕事。日程遅れなども1割程度は許容範囲だろう。最初の日程は大枠であり、段階的な詳細化などを通じて具体的になっていく。最初の大枠での”案”に対して、1日遅れたら失敗との烙印は普通は押さない。(日経での別調査でも、1割の違いは失敗とはしていないはず。これらは他でのプロジェクト失敗率などと一緒に別途調査。)

また、別の設問は「現在または直近で関わったプロジェクトで発生した問題は、以前にも繰り返し発生しましたか?」。それが、記事では同じ失敗を繰り返しているとの表現になっている。同じ問題の発生と、同じ失敗は違う。多分回答者は、”以前もスケジュール遅れが発生したな~”程度で、Yesにしたのだと思われる。

なんか今回の記事での数字は、言葉で妙にバイアスがかかっているように思えてならない。気になっているのは、この類の数字が学会などでも利用され、まるでIT業界は駄目チームのように受け取られること。就職先として人気無くなるだろうし、社内には過度に反応して非常に細かい管理で対策しようとする所が出てくる。極論だろうけど、開発ベンダーの資金調達などにもマイナスになる。ぎりぎりセーフや上手く回っているプロジェクトが、たくさんあるのに/あるだろうに、、、。

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