副題に、―モデリングから、プラント・モデル、コントロール・モデル― と記載されている本。何気に本屋さんで見つけて購入した。帰りの電車の中で斜め読みして、買って良かったとの印象の本。
ちなみに以下での(P~)は、本書でのページ数。
まず監修になってる「dSPACE Japan」だけど、メカトロニクス制御のハードウエアやソフトウエアソリューションを手がけてるドイツ dSPACE社の日本法人。個人的には、コンサル的な活動も少なくないように思う。日本法人は2006年に設立されている。
本書は、dSPACE Japan以外に日産やスマートエナジーという会社の合計4人による共著に近い。結構分野が違ったり、数式的なモデリング主体の話しだったり機能安全を含めたモデル開発の進め方の話しだったりと、千差万別。それらの違いが多少違和感になる時もあるが、幅広く知ることが出来るメリットの方が大きい。ちなみにモデリングでのシミュレーションツールはほぼ、MATLAB/Simulink。また量産コード生成ツールとしては、dSPACEのTargetLinkによる説明になっている。
実務寄りの話しが所々出てきて、モデル開発を行う意味での注意点というか課題などが明確なのがよい。実務者にとっては常識的なことでも、少し違う分野の実務者とか、これからモデルベース開発をやろうかと思っている人にも参考になろう。
具体的には、量産コード生成ツールの高いコード効率への要求として、コントローラの1円コスト増が1億円/年の収益源になる例えの話し。ただし、1000万台/年で平均10台のコントローラでの算出。(P21) 変数のバイト数を固定小数点演算にして2バイトあるいは1バイトにすることでのコスト低減になる話し。(P47) Simulinkでのブロック線図からCコードへの変換での、遅延処理まで含めた最適化の例の話し。(P47~) 計算負荷=実時間での計算での問題点。(P87) 実装での量子化された値への対応を行うためのアイデア。量子化での具体例として10ビット分解能のA/Dコンバータ。(P120) など。
欠陥生成ユニット(FIU)の話(P57)や、モデルベース開発と機能安全に関しては章を設けて説明している(第5章)。若干ではあるが、コンポーネントベース開発にも言及している(P128)。高信頼性化としても、参考になると考える。
数学モデルが所詮モデルであるし、精度の高い数学モデルを構築しても計算手法での限界があるとの意見も述べられている。(P194) 自動車会社の取り組みも紹介されており、本田技研のシミュレータで全ECU連携(P89)や日産の全てのエンジン制御ソフトウェアにモデルベース開発採用(P130)。 日産の事例は、どの部分/全部のモデリングかなど多少気にはなるが、モデルベース開発が浸透していると言うことだろう。
ソフトウェア技術者に一読を勧めたい一冊。