つれづれなる技術屋日記

しがない技術屋。専門は情報工学で、「つれづれ技術屋」って呼んで。

成熟度と競争優位性

Maturity Model での「成熟」って何だろうって考えることがある。”成熟”という言葉そのものには成長のようなイメージがあって前向きだけど、”熟女”とか”熟年”とかなると、少し陰りのあるようなイメージも付きまとう。

 

個人的に、CMMが弊害が多い(多かった)との印象があるせいか、成熟度は高ければ高いほど良いというわけでもないだろうにと思えてしまう。ちなみに、CMMでの印象が良くないのは、レベル2認定のため”だけ”に構成管理などを一生懸命やる話を聞いたりしているためだ。レビューなどのレベル3などの話には目もくれない。相手先の条件などのための認定取得ではなく、自組織のプロセス改善のために改善。スタッフが盲目的に指導して、現場とかは混乱するケース。端的には、構成管理のツール(のみの)導入や厳格な運用をしようとして、現場はうんざりといった感じ。(しかも予算の関係もあるだろうけど、継続的な改善として次のレベルを目指すとかCMMI認定を意識することがないようだ。)

 

 

で、最近ちょっと目にしたのが、ジェイ・B・バーニーの「競争優位の構築と持続」。

 

持続的競争優位性として、”自社の持つ経営資源は真似されにくいかどうか?”を挙げている。

 

また、画家の猪熊弦一郎が、尊敬していた師匠アンリ・マティスから「お前の絵は。うますぎる。」と言われてから自分の作風を確立していった逸話も目にした

 

スポーツ選手やチームが、その特徴を「弱点であり強み」と表現することがあるように、自分やそのチーム自身の特徴が強みであると同時に弱点になることがある。ただし、弱点部分を急に直そうとすると、バランスが非常に悪くなってしまう事が多い。

 

ある程度の成熟度のために自組織の成熟度を上げることは大事であるが、成熟度向上だけに固守するのもおかしな話である。また、参考とするその指標自体も数年もすれば改訂される。むしろ組織体の目標を明確にすることや継続的な改善をどうするかを検討すべきと言える。(スポーツの世界では、記録やリーグ優勝などの方が目標であり、打率などを成熟度での指標の1つと考えれば分かりやすいだろうか。)。

 

なお、昨今は企業経営が多岐にわたり、しかもダイナミックになってきた。1つの製品のみを扱うケースは皆無で、複数の事業を抱え、多くのグループ会社をもつ企業が多い。しかも、100%子会社ばかりではなく、資本支配や提携といった形態も少なくない。M&Aをはじめとして、全くの他企業を傘下に収めることも良く行われている。オーナー企業の方が、革新的な商品やサービスを提供しているケースが少なくない。

 

それらを考えれば、親企業などの特定企業や特定部署の開発プロセスとか管理方法を100%真似るような目標を持たせること自体が、非現実的である。一般的に言われている成熟度での、統一的な把握や制御は、困難とさえ思える。

 

 

とある会合で、成熟と”成長”とは相反するのじゃないかとの意見が出て、「なるほど!」と思った。成長を意識しつつ、成熟度の視点と継続的改善の視点の、両方を持つべきだろう。

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