つれづれなる技術屋日記

しがない技術屋。専門は情報工学で、「つれづれ技術屋」って呼んで。

「The Software Project Manager's Bridge to Agility」

少し急ぎ足だったけど読んだ本。

 

英語の本で、既存のソフトウェア開発プロセスへのアジャイル手法の組込みを意識したもの。既存プロセスとして、PMBOKでのプロセスを前提としている。

 

非常に気に入ったのは、PMBOKでの各プロセスの番号(章/項:例えば「プロジェクト憲章作成」 4.1)が、そのまま同じ番号での章/項で使用されているところ。各プロセスで、従来の手法とアジャイルでの手法が対比的に表形式で述べられているところである。ちなみにここで記載した手法とは、PMBOKでの”ツールと技法”に近いといえる。

 

企業内の開発組織は、それなりの成熟度を持っているところが少なくなく、大なり小なり既に社内プロセスが確立している。そのような場合に、一挙にアジャイル手法を導入するには無理があることがある。製品の開発中とか、派生での開発で従来のプロセスを踏襲する前提の場合が、特にそうである。

 

そのような場合、小グループで実践するとか、一部のアジャイルラクティスを導入するなどがよい。後者の場合、今回のような本は参考になるだろう。特に、従来の社内プロセスをPMBOK上のプロセスにマッピングしてある組織体とか、マッピングしやすい状況ならなおさらだ。

 

この本では、複数プロジェクトやPMOに関しても言及している。その部分も大規模プロジェクトなどには参考になるだろう。ちなみに、著者の女性2名はどちらも、PMPで認定スクラムトレーナー(CST)である。

 

なお、この本でベースとしているのは、PMBOK 3版。細部では4版でないことを気にする人もいるかもしれないが、3版と4版は大きな違いは少なく、各プロセス内やいくつかのプロセスの変更がほとんどである。そのため、実際に適用してみる場合に、各自でのプロセスに応じて検討すればいいのではないだろうか。

 

自分の回りには、PMP取得者とかそれなりの社内プロセスを持ってる人が少なくないので、勧めたい一冊である。

 

 

なお、関連して少し。

 

CMMIアジャイル手法に言及した本も出版されている。書店で見かけたのが、左の本。

 

また、アジャイル系のTwitterつぶやきで見かけたのが、以下のサイト。スクラムでの手法とCMMIとの関連を述べている。

 

 

http://www.scrumalliance.org/articles/334-implementing-scrum-agile-and-cmmi-together

 

上のサイトでは概要しか書いてないが、それでも結構役立つのかもしれない。(ただし、自分の回りにCMMIを今も中心的にやっている人が皆無なので、感想などを聞くチャンスがないが。)

 

 

ちなみに、アジャイルでの手法とPMBOKを中心としたソフトウェア開発プロセスとの関連性は、結構以前から検討されている。

 

自分の持っている書籍の中では、この「実践アジャイル」がその代表。2005年出版。

 

2005年出版なので、PMBOKは2000年版をベースにしている。また、プロセスの記載順が、PMBOKでの立ち上げでの各プロセス→計画での各プロセス……となっているので、少し違和感がある。

 

ただし、今回「The Software Project Manager's Bridge to Agility」の紹介を兼ねて、この「実践アジャイル」を読み直したら、参考になる部分が結構あった。当時読み流していたんだろう。その意味では、今でも参考になる箇所が少なくない。

 

この「実践アジャイル」でも触れているが、「APMBOK(アジャイル PMBOK)」なるものがある。「実践アジャイル」著者のサイトにある。

 

その後オリジナルは新版発行されたが、日本語翻訳は行われていないように思っていた。しかし、オリジナル新版を探せていない。探したら、ここの部分に追記等を行う予定。

 

 

いずれにしろ、個人的にはアジャイル導入での困難さとかの議論には多少辟易している。困難だったことをどう克服したかならまだしも、弊害が多いとの意見に終始している。ここで述べた書籍などで、生産性や品質の向上を意識しつつ、現行プロセスとアジャイル手法の関連性を考えるのは良いことだといえる。

 

 

補足:当初、APMBOK(アジャイル PMBOK)が英国プロジェクトマネジメント協会(APM)によるものの日本語訳と記載していたが、どうも勘違い。APMアジャイルを絡めている事と、ごっちゃになってたようだ。ちなみに、" APM Body of Knowledge"なるものはAPMから発行されている。

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