つれづれなる技術屋日記

しがない技術屋。専門は情報工学で、「つれづれ技術屋」って呼んで。

新型コロナで浮き立ったネットワークインフラ格差

今日(19日)の日経新聞トップは「オンライン初診ほぼゼロ」。政府のオンライン診療強化に向けての、新型コロナ患者への遠隔診療報酬の2倍超に引き上げにも触れていた。いくら新型コロナ対策が急務といえども、報酬を倍にというのにはさすがに首をかしげたくなったし、見出しの”オンライン初診”に拘るのも少し気になった。

オンライン検診と言っても、やはり患者さんと医師とがの信頼関係がある程度築かれることが重要。初診をオンラインでというのには、そこの病院や医師に対する信頼とか、患者自身への信頼感も必要。地元とか紹介状経由でのオンライン初診は納得できるとしても、普及率アップを急ぐ必要はそう大きくないだろうと考えたためだ。そして電子カルテで従来の病歴も初診側に伝わるかも、影響を受けそうでその病院間での情報共有の普及はそう高くないだろうと思えた。

 

逆に、オンライン検診のためには、カメラとかスマホとかネットワーク環境が重要。どこかの公民館とか診療所と大きな病院を結んでの検診も考えられるだろうが、今回の新聞の記事などでのイメージは、開業医と患者自身の自宅を高速ネットワークで結んでのイメージが強い。動画などでのやり取り。それがそもそも全国津々浦々普及しているか???

 

そんなことを考えたら、新型コロナでのワクチン予約騒動を思い出した。高齢者向けの予約を開始したら、電話がパンク。インターネット予約もパンク(だったかな)。電話は、緊急電話のための容量確保まで行う始末。

インターネットの方が予約取りやすいとか、接種種によってはインターネットのみとしたが、これも一騒動で、後者ではインターネットのみとは何事かとの不平に向けて、急遽オペレーターを設けた電話予約も可にするケースも。

インターネットの予約では、子供や孫による入力や、自治体やボランティアで代行入力するのが大きくテレビなどで取り上げられていた。

高齢者がスマホ操作(のネットワーク予約)に不慣れとの言い方が多かったが、個人的に気にしたのは、スマホのネットワーク通信料。スマホでの通話って一定金額払えば使い放題が多い。それに対して、ネットワークはパケット量で料金が変わる。あるいは、その月のパケット量が多いと、自動的に次の料金プランに移行するとか、通信スピードが遅くなったりする。それを考えると、予約しようとしてずっと待たされるというのは、課金が気になってくる。しかもそれは相当長くなるし、複数日になる時も。自宅でのWifi環境ならまだしも、無料Wifi環境に居続けなければ、どんどん課金。そんなイメージになる。ただしがあって予約で待たされても、実際のパケット量はそれほどでないと思われる。それがちゃんと説明されれば安心感になるが、その説明は耳にしなかった。

つまり、高齢者の新接種予約のゴタゴタは、高齢者向けのネット環境がいかにチープかを如実に示した格好になったといえる。しかも、高齢者を当初に見据えたシステムとすべきを、その点を熟慮してなかったように思える。(報道にもよるんだろうが、むしろ地方での施設などを中心とした接種や予約代行を中心にすえるべきだったとも言える。あるいは、首都圏のような所でのネットワーク予約は、事前に家族等の代行を前提としたアナウンスをすべきだったと思う。)

 

実は、4月頃に実家回りが光通信へなるということで、同窓生とSNSやり取り。実際に説明会などが開かれたようだが、2021年になってやっと。言い方良くないけど、地方なんてこんなもんとの認識が必要。上でワクチン予約の事を書いたが、携帯でとかADSLとかで予約しなさいと言ってるようなもの。(フレッツテレビとかもできそう?と聞いたら、何それ状態で、県庁所在市でもフレッツテレビはまだとのこと。CATVに関しては、県庁所在市はOKだけど、県での可なのは数市程度だったと思う。) 

ご存知かと思うが、携帯電話の普及率って、以前は市役所周りに敷設したら、その市全部(の人数)をカバーしてるとして数値化。結局スマホというか今は、約500m四方のメッシュに区切りメッシュの過半カバーできたらそのメッシュ人口をカバーしてると見做せるように変更したが、それまでの人口カバー率は相当水増しされてたと見るべきだ。携帯電話料金を下げるとの政府目標?があるようだが、人口カバーでのスマホ普及率とか光回線の普及なども合わせて考えて欲しいと思う。回線が普及してないのに料金が下がったでは、一部だけの恩恵というわけだ。

さらに言えば、今回ワクチン接種ごときで、緊急通信にまで影響が出た事を踏まえ、(従来の固定電話回線を含めた?)容量アップなども合わせて考えるべきだろう。ワクチン接種”ごとき”は少し語弊あるかもしれないが。

首都圏などのワクチン騒ぎで首都圏の通信料金を安くししたり回線を太くは議論されるだろうけど、むしろ地方のをそれの強化しないと格差はどんどん広がるといえる。地方といっても、県庁所在地だけじゃなくて、それ以外を含めた検討が重要そう。

 

携帯電話が過疎地を救うなどの話題はあった。今だとドローンで僻地への輸送が技術的には可能。ただし、前者は今の人口カバー率などでほんとに進んだか見るべきだったといえる。また後者とかでは、空中権の事などで、全国に行きわたるかを議論すべきといえる。どちらも実証実験などでバラ色っぽく言われる/言われたけど、課題が少なくない。

 

論文問題として、老齢化社会とかの社会課題を題材にされることがある。自分の身近なものとしては、技術士二次試験での論文が該当。情報工学部門では、過去に、被災地に対する情報通信を課題にしたものが出題されている。しかし、携帯電話やスマホの普及を前提として回答を記述するだろうが、そもそもインフラ整備が立ち遅れていたり、スマホの操作性で高齢者等がネックとなることの課題が大きい。そんな課題を踏まえた設問もあったほうが良いと思える。設問というか、技術者の方の問題意識と表現した方が良いのかもしれないが。

今回の新型コロナで課題となった、リモート検診、高齢者見守り、自宅療養での急変、リモートワーク、リモート教育などに全部に通じると言える。なんか新型コロナが、技術者にも宿題を提示。そんな風に思えた。

 

 

「Σ」は漢字? 「ゔ」はひらがな?

とある勉強会で、用語集なるものを作成/メンテナンスしている。用語の並び順の見直しをした際に、「Σ計画」(しぐまけいかく)の位置が気になってきた。なお実際は、Σを先頭とするΣ計画に関連した文言。

 

その用語集では数字、英字など、そして「あ」の段、、、、と続けている。以前あまり気にもせず、Σを英字の後(つまり「あ」段の前)にしてた。ところが、このようなギリシャ文字を含む英語などの用語は、国語辞書なら読み方で個所を定めて、Σなら「し」の段にしてるようだ。なお、今回のΣはギリシャ文字なので、業界用語辞典の類では英数字、記号の方に含めている場合もありそう。

 

Σは読み方は明確だが、「凸」のように(音訓読みのある漢字と定められているが)漢字なのか記号なのか悩むケースがある。そしてこれも用語集に含める可能性は皆無だが、若者表現というかネットでは「☆彡」のように意味は持つものの読み方が定まってないものもある。そのため、用語の登録時に悩まないように、ルール化してみようと思った次第。

そこで、”ASCIIコードでの数字、英字と記号”と、”音訓読みのはっきりしているひらがな・カタカナ・漢字”を別格として、1バイト系の文字や記号と2バイト系の記号や読み方の分らない文字を、ASCII記号の後に並べるようにルール案とした。

1バイト系の文字や記号には、ドイツ語とかフランス語の文字、そしてギリシャ文字などがある。記号に関してはいっぱい。2バイト系の読み方の分らない文字には、簡体字繁体字、ハングル文字辺りも含める考え。一般的にΣはJIS漢字コードの文字だが、ここでは1バイト系としている。unicodeでΣなどが漢字よりも前に位置してるというと、イメージが分りやすいかと思う。

 

ASCIIコードでの英数字と記号としてるのは、ASCIIコードでもunicodeでも同じだが、英数字記号を1まとめにしていて、コード順を文字並び順に出来ない。例えば、”[”は”Z”の後で”a”の前に位置する。そのためASCIIコードでの英数字以外を記号として、その中での並び順は、unicodeの並びで良いとしたわけだ。

 

なお、「☆彡」は読みようがない(確定して無い)ので、記号扱いで「あ」段の前。もちろん今作業している用語集に掲載するかは別であるが。

 

今回の勉強?で気づいたが、「ゔ」は一般的に使われずJISには無いが、unicodeにはある文字。ただしJISには無いと書いたが、JIS X 0213(拡張漢字)には含まれてはいる。JIS X 0213の普及度や他の一般に使われない字(記号?)の並び順を考える場合に、複数版のあるJISで考えるよりもunicodeの方が良さそうとの意図もあって、そう表現した。今作業している用語集に掲載するなら、ヴと発音するなら、ひらがな文字扱いという考え。

また、用語順が国語辞書でも微妙に違うのは以前から知っていたが、国語辞典でのアルファベット用語というかアルファベット略号の扱いも色々のようだ。広辞苑だと(第6版から?)付録として別冊にしてある。ふと今回問題視した記号的な用語の扱いが、近い将来どうなるか、ちょっと興味が出てきた。

 

 

 

 

洪水 魚道や樋門との関係は?

ここ1週間ほどのニュースでは、大雨による洪水が大きく取り上げられてた。熊本や広島は3年前?のそれを思い出されたが、その後他の地域や、長引いて他の九州の地域での河川氾濫間近が河川情報とカメラ映像で報じられた。実家近くの大きな川をそれで目にして気になり、同窓会SNSでもネタになった。今朝では、実家とは別方向ながら、その支流もニュースになった。

 

で、ふと実家近くの工事を思い出した。ここ数年近くかかって、魚道と樋門の工事してる。まだ完成したところを見てないから何ともだけど、2つを一緒にした構造物で、工事担当が違うだけで2つの掲示があるのかもしれない。これも見てないからだけど、”ゲート”は無いように思う。

気になったのは今朝見た支流とその本流の関係。本流の河口近くは、昨日だったか河川氾濫間近がニュースになった。その本流(と言っても中流の箇所辺り)で気になってたのが堰の工事で、階段状に変更した。もう20年近く前? 本来この階段状というか段々畑状態を樋門という様だ。(ただ、”門”と付いてるから多少解せなくて、専門家や業界として公式には??)

階段状というか段々畑状態なら、魚道な訳で、これって、ダムみたいに一旦水を止める役割をしなくて、大雨の時には下流に一気に流れ込むのではと思った次第。首都圏の人には馴染みがあるかもしれないけど、多摩川の田園調布あたりって、水門があってその脇に段々畑状態のがある。普段は水門で水をある程度蓄えてるけど、大雨になると脇の魚道の方から一気に河口へ。より上流側でも、最近を含めこの堰の工事って結構やってて、魚道を設けてるのが多い気がする。

魚道は、お魚さんが川に戻るようにで、大きな世の中の流れ。本来はダム不要論と結びつかないだろうけど、お魚さんのためだけでなく治水の目線で見直すことも必要ではと思った次第。

 

横浜国際競技場のような遊水地みたいな考えとか、そもそも遊水地を利用した治水なども行われている。ただ、お金のある、あるいは大きな河川ではその対応もあるだろうが、地方だと堰→魚道の一辺倒では問題が先送りになる気がした。線状降水帯のように相手が変化してると考えると、防災や減災側のこちらも少し考え直すべきかと思った次第。

大河ドラマ「青天を衝け」のパリ万博 VFX

ここ2,3年、NHK大河ドラマは見てなかった。今年の「青天を衝け」も、出演者で興味ある人とそうでもない人が半々といった感じで、見ずに来た。が、もう1月程前(7月11日)放送の「第22回 篤太夫、パリへ」は、鹿児島(薩摩)出身の自分としてパリ万博がどう描かれるか少し興味を持って視聴した。

幕府側と薩摩の駆け引きなども面白かったが、なんと言ってもCGというかVFXに感嘆。パリの古い町並みとか、パリ万博の建物とか展示物など、相当手間をかけてる感じがした。合成の映像を見て「もしや」と思って調べたら、新型コロナの関係で現地=フランスに行けず、国内撮影と合成したとの事。カメラ動作との同期などを考えると、緻密な計画が必要だろうにとそんなことも気にしてた。

あと、映画などで有名な国内のVFXチームあるし、自分が見た中のNHKでは「坂の上の雲」のVFXが印象的で、そんなチームとの関係も少し気になってた。

7月には詳しく調べなかったが、今日ひょんなことで以下のページを見つけた。

www6.nhk.or.jp

「青天を衝け」VFXメンバーの松永氏が書いたもの。本ブログで紹介したく思ったのは、彼が入社(入局)して、CG制作、VFXに携わったいきさつ辺りが書かれている点。上で述べた「坂の上の雲」とかの関係も書かれてて、興味深く読んだ。彼のVFXというか作品とVFXの関係に関する哲学みたいな事も書かれてる。

人によるだろうけど、NHKでこつこつCGなどをやって、他のチームとのやり取りで、VFXの技術を高めていった感じに受け取った。予算の関係もあるだろうけど、自社の研究開発の大切さ。これは、日本国内の企業や団体間でもだが、海外との差でも同様かと。(ついつい、日本でのワクチン研究開発施策を連想してしまう。)

述べた哲学の中に「アナログ手法でもチープな手法でも結果がよければ構わない」というのがあり、なるほどと。これらとは直接関係しないが、パリ万博のシーンで個人的に少し不満だったのは、屋上での旗。作成時間などの関係もあろうが、逆にそんなところを固守するよりも、他のところでといったところか。(ITシステムとかで、ほぼ使わない機能に、えらい労力使ってバグだらけみたいなのと、ついつい対比。)

なお、このサイトで貴重に思ったのが、パリ謁見でのシーンの絵コンテ。日本側の出演者がピンク色。多分これを元に撮影用のコンテの類とか、VFX向けコンテ、カメラ向けのデータ?みたいなのを作成するんだろうと思われる。

 

このページを見て、もしやと思って検索してくと、結構今回の大河ドラマでのVFXのことがまとまってるサイトがあった。以下の2つ。しかもこれらもNHK公式。

www.nhk.or.jp

youtu.beなかなか参考になり、しばらく「青天を衝け」を見続けようと思う。

 

蛇足めいた話題。今日の放送(第24回「パリの御一新」)を見ながら、オープニングを注意してたら、松永氏の名前がない。だから第24回のパリの風景が青っぽい?みたいな事考えて、パリ万博の回を確認しようと思った。でも、気に入ったシーンだけにして、オープニング消したかもと不安も。結果的にはオープニングも残ってたけど、VFXは第24回と同じ人の名前。

少し気になってスタッフ一覧見たら、VFXに複数人。各回のVXF責任者みたいな決め方をしているのかもしれない。また、松永氏は作品全体でのVFXチーム統括あるいはサブの立場? まっ、そんなことも気になった。

www.nhk.or.jp

で、つらつらスタッフ一覧見て、気になった用語を調べたりしたが、「衛生班」なるものを見っけ。多分新型コロナ対策。出演者やスタッフの手などの消毒、マスクの類の準備などをしてるのかもしれない。他に、全体的な予防に向けての指導、、、。自然発生的に作られて役割名にしたのか上層部なり委員会みたいなのからの指示なのか、実際を知ってるわけじゃないけど、プロジェクトというかチームの臨機応変な対応とか役割分担に関してもちょっと考えさせられた。

日本プロジェクへの再注目

今日のテレビ「チコちゃんに叱られる!」では、消せるボールペンが”チコジェクトX”として紹介された。ご存知かと思うが”チコジェクトX”は、同じNHKの「プロジェクトX」のオープニングなどを模したもの。ナレーションも同じ田口 トモロヲさん。

 

”チコジェクトX”は今まで何度か放送されており、「プロジェクトX」そのものを懐かしがった人も多かったと思われる。その関係もあってか、リストア版がBSで放送されている。BS4Kで4K放送だが、BSPでも同時放送されている。

プロジェクトX 挑戦者たち 4Kリストア版 - NHK

 

以前に発売された元々のプロジェクトX DVD。

 

なお、プロジェクトX リストア版の6月1日の放送で取り上げられた、日本ビクターのVHKビデオの開発物語は、映画もあってDVDは以下。

日はまた昇る」で、結構豪華な配役。なかには社員間の微妙な気持ちの描写もあるし、(史実かまでは?としても)当時ライバルのソニー社員とビクター社員のカップルの話などもあって、映画の方が感情移入しやすい気もする。

VHKビデオの開発物語は、プロジェクトXでも映画でも取り上げられたが、本社による工場のリストラが伏線としてある。VHSの開発は工場側で、本社のリストラ実行指示に対して工場内でのチーム立ち上げとか人員移動、そして本社への釈明、、、。そして何より、本社に隠れての開発実行がある。最後のは、結構日本の(過去の)プロジェクトで多く、現在のリストラ旋風でも頭の隅に入れておくべきと言えよう。

さらに言えば、VHKビデオの開発物語でのキーポイントは、親会社トップと言える松下幸之助氏へのプレゼンや賛同を得たことだろう。そんなことも頭の隅へと言えると感じる。

 

ちなみに、同じNHKの「神田伯山のこれがわが社の黒歴史」という番組では、プロジェクトXよりも最近の、しかもどちらかと言うと失敗プロジェクトを扱っていた。目にしたのは、おもちゃメーカー・バンダイの「ピピンアットマーク」。ただこの番組、再放送をたまたま目にしたが、定期放送の番組ではないようだ。もう1つの回があったようだが、オンデマンドなどのみのように実際には放送されずに思える。

 

自分の意識のせいか、最近ポツリポツリと、このような日本のプロジェクトを見直す番組や書籍などを目にすることが少なくない。野中郁次郎氏(共著)の「知的創造企業」の”新装版”が出版され、それらの代表格と思えた。

 

思うに、海外等のGAFAMを見出しにしたセミナーなどが多い。プロジェクトマネジメントの勉強会で”変革”への対応みたいなことが強調され、GAFAMとかAirbnb(エアビーアンドビー)やウーバーイーツのような、急成長企業の様子を前ふりにした講演が少なくない。

それらへの参加が無駄とは言わないが、余りに成功の表面的な話で、苦労話や社内調整みたいな話が少なくて、実際に身の周りに適用しようにもギャップが大きすぎる気がする時がある。”変革”に関して勉強しようと思っているのに、新規構築とか新分野参入とか場合によっては稚拙に近い買収による変容に該当して、違和感を覚えたりする。(GAFAMのMはマイクロソフトなわけで、変革=回復と言えば回復だが、その辺りの話には言及されない気がする。Aのアップルに関しても同様。)

そういうのに接してる機会が多いと「温故知新」のしかも、日本でのプロジェクトへの”温故”の意識が高まるというわけだ。日本のプロジェクトの方が、プロジェクトに関与した人や関連企業を含めた周辺情報が得やすいし、細部をイメージしやすい。

 

ちなみに野中郁次郎氏は、共著の関係もあって、アジャイル開発などソフトウェア関連のイベントで講演されるケースがある。以下の動画はスクラムギャザリングでの動画で、氏の人柄などが分りやすいものと思える。(ほんの一瞬だが、放送だとピーを被せるような発言もある。)

Regional Scrum Gathering Tokyo 2021( #RSGT2021 )

youtu.be

ついでに。野中郁次郎氏での最近の著作に「ワイズカンパニー」がある。こちらも同じ竹内氏との共著。

帯に、知識創造企業の四半世紀ぶりの続編とある。海外の企業のことも書かれているが、日本の企業が多く、より近いイメージで参考になることが多い。

さらっと読んで、目を引いたのが「トヨタにおける生き方としての矛盾」。歩みは遅いが、大飛躍をする。高効率だが、社員の時間を無駄に使ってるように見える。そんな項目が並ぶ。章としては「第8章 政治力を行使する」で、ワイズリーダーが備えるマキャベリズム的な手段も辞さない必要性について述べている。マキャベリズムだけを聞くと違和感覚えるかもしれないが、論旨は本文を読んだ欲しいと思う。

他にJALの再建にそれなりのボリュームを割いているし、スポーツなどのメタファーが述べられてて、実際的に役立つ話が多いと感じる。

そして、トヨタのなぜなぜ分析と、ホンダのA、A0、A00の手法が隣り合うように書かれているのも興味深かった。本質をつかむのに、トヨタのなぜなぜ分析を社員教育で行ったり実践している所は少なくないと思う。個人的に、それ自体を悪いとは言わないが、トヨタのそれは5回繰り返すということで、社内実践でもそれを強要するみたいな弊害を時々聞く。産業分野も異なるし、開発初期の原因がはっきりしてる問題に適用しようとしたりする。後者とかだと、開発スピードを遅めてしまうのに、、、。

ホンダのは、Aが仕様に対する問、A0はコンセプトに対する問、A00はプロジェクトに対する問で、トヨタのなぜなぜ分析と用途が違うとは思える。ただ、組織体によって、本質のためにというのを繰り返す手法を、それぞれで工夫することが重要。つまり手法を勉強して、そのまま守るように実践するのではなく、組織体に応じて変容させるのが重要である。変容が必須とまでは言わないが、必要なら変容させる意識は基本と言える。

 

プロジェクトリーダー、プロジェクトサブリーダーになったりしたら/なりそうなら、ここで述べたような日本プロジェクトをちょっと勉強してみてはどうだろう。そんなことを思った。

2020東京五輪での技術革新

今朝の日経新聞では、「五輪、テレビでも臨場感」と題する2020東京五輪での映像技術の進化。オメガ社による競泳でのスピード表示や、インテル社による立体データによる再現などが紹介された。

 

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上は、記事でも触れられてた、競泳大橋選手の200m個人メドレー決勝でのシーン。ゴール直前の様子。

 上は、多分新聞記事と同じ技術と思われる、バレーボールでの立体データによる再現。他にも、体操やトランポリンで目にした。いわゆるビデオによるリプレイみたいな時間差で再現されるので、結構参考になるし臨場感がある。

 

しばらく前にテレ朝だったと思われるが、実際は実現しなかったものも含めて2020東京五輪での技術革新の紹介があった。ここでの競泳でのスピード表示以外に、複数カメラの映像を組み合わせてのヨットのレースの様子や遠隔地での立体再現などが紹介されたされた。後ろ二つはパブリックビューイングの利用を考えていたようで、実現しなかったと述べてたと思う。ヨットは全体というか俯瞰的に見る事ができるもの。立体再現は、卓球の様子だったけど、遠隔地で中央とか選手後方とか各自の位置から試合会場で観戦している雰囲気になるそうだ。

今回の新聞記事は、実現した技術革新だったが、上のような実現しなかった技術革新にも言及してもらえればと思った次第。国内含め次のイベントへの活用、他社を含めた技術革新に結びつくと思われる。ふと企業サイドから発表すればと思ったが、新型コロナの影響をどう表現しつつ紹介するかが悩ましそうで、新聞記事や専門分野のネット記事辺りの方が良さそうと思った次第。

また、結構以前は、「空飛ぶタクシー」とかも予定されていたと思う。自動運転での選手輸送もそうだった? リニア新幹線の開通を言い出した人達もいた気がする。それらも実現されなかったと言えるが、その辺りの理由を冷静に考えるのも悪い事ではないと思われる。リニア新幹線辺りになると過度な政治家さんらの便乗辺りが理由だろうけど、自動運転や空飛ぶタクシーは広く一般に広めるための規制とか権利関係の絡みが大きそうに思われる。そして、安全性というか万一のリスクとのバランス、、、。それらの概要を情報共有することで、用途を絞った更なる技術革新を行い、そんな用途における問題解決を進めていくべき。ふとそんなことも思った。

 

 

「ソニー半導体の奇跡」と”ソニー流シックスシグマ”

しばらく前に購入した本に、「ソニー半導体の奇跡 お荷物集団の逆転劇」がある。本屋での平積みで目にしたのが先か、新聞広告で目にしたのが先か、良く覚えていない。ソニーの、2月とかでの純利益過去最高予想とか、3月下旬での年間ボーナス6.9か月の報道などの回復振りを目にして興味を持ったのである。

 

製造業というか電気系大企業に関わる、業績回復の類の明るいニュースは、久しく目にしてない気がした。本の広告や、本の帯での「逆転劇」とか「どんでん返し」が、V字回復を連想させて参考になる面がありそうと感じた。また、神奈川県厚木市を「辺境」と表現しており、ちょっとした小気味良さと、逆にその辺りに回復のキーポイントがあるかもと思った。

 

また、ソニーに関するここ十数年の書籍では、この本でも触れてる「ソニー本社六階」などを含めて、内部批判的な本が多い。それらの一部しか読んでないが、そこまで言わなくてもみたいな表現も少なくなくて、気持ち的に前向きになれなかったこともある。その意味でも、この本は少し前向きに思えて興味を持った。

 

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帯ありの状態。

 

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帯無しの状態。

 

 

なお、以下の感想での(P )内などは、本書でのページ数。

著者の斎藤端氏は、1976年ソニー入社、企画畑が多く、ソニー半導体グループ副本部長やソニー執行役などを務め、2015年退任。(退社なのかは? ちなみに2014年にメディカル事業担当だったようだ。)

この本は、斎藤氏の目線で、ソニー半導体グループの”逆転劇”ぶりが述べられてる。そのため、戦略に対する反対意見を含め様々な意見、そして役員などを含む様々な人たちの思惑のようなものが主となっている。反対意見や思惑の相違がそれなりに書かれているの。そのため相当前にソニーの製品や社内体制に関するルポライター的な本などがいくつかあったが、成功?結果から逆算するように述べられているものと対比的である。逆に、企業人としては、そのような混乱時が結構な悩ましく、ソニー半導体でも似たようなことが起きたんだ~と思わずにはいられない。

また、この本での半導体での大きな転換として、CCDイメージセンサーCMOSイメージセンサーがあることもあって、これら半導体に関してページを割いている。著者が社内役員等を務めたことで、多くのソニーの役員などや、そして社外の経営陣などが多く登場する。記述が長期間にわたることもあって、他の人が味方というか同陣営なのか、敵というか反対陣営なのかが変わったりする。各人の性格的なことによる言動もあるが、読者としてはそれぞれの人をすぐにイメージできないことも少なくないと思われる。経営人レベルの話題としては、海外を含めた要人との会食やステータス構築の話題も所々出てくる。読者によっては、半導体部分はある程度読み飛ばすしたり、経営陣に関してはある程度予備知識を入れておいた方が良いかもしれない。

 

ソニー半導体のV字回復の理由を知りたいとの思いで読むと、少し拍子抜けかもしれない。個人的には、ソニーの複数企業としてのグループの多彩さ、設計開発のスピードアップのための熊本へが大きな理由と考える。細部は後述するが、そうだとしても本書での記述では紆余曲折とか、激しい対立があり、トントン拍子というわけではない。ついつい、たまたまラッキーだったのではと思えるくらいである。戦略に対する計数的な検討の場面も紹介されるが、大きな決断ではそれ以外の要素が大きかったように思える。逆に、他企業等の立場で読み進めるなら、「銀の弾はない」とか「犠牲と代償」について思いを新たにする気がする。

 

CCDイメージセンサーCMOSイメージセンサーでの話でのキーマンの一人が、ゲーム機プレステ生みの親の久夛良木氏。当時は半導体事業部長を兼務していて、CCD増産停止を宣言する(P29)。既にカメラメーカーからの増産要求もあってCCDの担当者は大変苦労したとのこと。本書では大変苦労と表現してるけど、多分相当なバトルがあったと予想する。ただしがあって、その担当者の、CMOSを加速させたのは「久夛良木さんのおかげ」との言を記している(P30)。

そもそもソニー半導体の宿命として、外販と社内利用なりグループ企業への販売がある。裏面照射型CMOSイメージセンサーの個所では、新製品の販路として他社に活路を見出す(P128)。製品群ではライバル関係でもある、キヤノン(P133)やオリンパス(P137)との絡みも記載されている。半導体を含め外販と自社内販売の利益相反は良くある話であり、各社色々工夫してるだろうが、この本では過去の出入り禁止の伝説(P137)を克服してのアプローチなどの話もあって、外販へ前向きでの参考となるのが良いと思う。

半導体(あるいは液晶)に関しては、他社でも部門を切り離したり、複数他社を含めた企業化などを行っている。本書ではハワードストリンガーCEOによる半導体事業売却の話し(P59~)、逆に数年経ってからの長崎工場の買戻し(P198~)と、両極端?の話が出てくる。後者では、簿価とかソニーに復帰したことになった社員の話などもあって、参考になりそう。

CMOSイメージセンサーの強化のための大きな作戦が、開発部門の熊本移動。上述の厚木での開発部隊を生産拠点の熊本へ移動させるというもの。研究開発→生産のスピードアップを意図してものの。P152 辺りから書かれているが、総数約170人。家族の自家用車の心配など具体的に書かれている。当然だけど、スピードアップのための技術的課題のクリアーもある。本書を通じては、個人的には研究開発部門の協力があってのことというか、ラッキーだったのかもと思えてしまった。

これらが、ソニー半導体のV字回復として個人的に考えられることかなと思った。逆に、こうも多方面に外販している企業はそうないし、事業部というか工場の買戻し辺りになると少し特異なケースと言えるかもしれない。

 

半導体の事業編成に大きく関わるのは、「東芝」。そして技術的な提携辺りで関わってくる「IBM」との本書での話しは、結構面白い。特に東芝は、東芝本体での稼ぎ頭として新聞等に以前は大きく取り上げられてたのが、急落したとのイメージ。本書では、上述の長崎工場の買戻し等にも大きく関係している。

本書での東芝がらみのエピソードとして、個人的に興味あったのは2つ。P208では東芝のお偉いさんが、ソニー側の人の名刺を目の前で折り曲げたという話し。”ソニー以上の野人がいるものだと衝撃を受けました”と表現している。自分達も野人と少し認識している部分には多少苦笑だけど、こういうところが企業の合従連衡での基本部分かと改めて思った。

もうひとつは、東芝→引き抜きでソニーの役員になった人のエピソード(P40)。ソニー厚木の社員食堂で、社員を前に「東大の卒業生のうち一番優秀なものはまず東芝に入社し、、、」、残ったものがソニーへ、そしてそれが東芝半導体が世界一との話。ただしがあって、筆者の感想としては嫌みがなく東芝IBMと協業する意義を伝えたかったのだろうとしている。

 

IBMとの絡みも色々書いてあるが、ソニープレステ用のCellと似て非なる技術をマイクロソフトに提供した件(P33)や、半導体部門売却に関連して契約の見直しでの交渉(P66)の様子が個人的に少し印象的だった。ただ、この2つは、契約にまつわる難しさやちょっとした交渉術の話。個人的には、前者は少しあるものの、IBMへの感情的な考えでもないと感じた。

 

なお、ソニーOBにも触れている。電機業界の人が韓国等へ高額で引き抜かれた話は有名であるが、そんな人の話(P158)にも触れ、研究所長になり厚遇だったそうだと記している。あと印象に残ったのが、ソニーOBにLSI開発を持ちかける話(P190~)がある。後者も、感情的なことよりも、共同開発費の捻出を他の事業部との相談とか本社の開発費制限をどうかいくぐるか話が主となっている。なかなか微妙なバランスだな~が個人的な感想。

 

著者は長く半導体事業に携わってきたこともあって、半導体事業に関したり、経営陣絡みの意外なソニー面も述べられてる。品質トラブルに絡むワイブル分布(P49)、半導体事業売却に関するストリンガーCEOとGE元会長のウェルチの絡み(P59)、創業者井深のICやLSI嫌い(P93)、社内関係を心配しての秘密裏プロジェクト(P134)、キャッシュフローマネジメント(P173)、改善活動での金塊の発掘(P177)、他事業本部の兼務と駆け引き(P180~)、経費というか開発費の本社とカンパニーとの関係(P193~)など。「金塊の発掘」ってうまく表現できないが、興味あれば本書を読んでもらえればと思う。

 

長く携わってきたのの典型に思ったのが、本書の最後の方で述べてある新入社員への質問への返答。著者が副本部長の頃、新入社員がCMOSイメージセンサーに関して質問。ソニーのCCDは負けちゃいないと、その時は返答したとのこと。ただ、今となってはこう答えるだろうと、創業者の精神という言葉を交えて書かれている。その辺りがこの本の本質と思えるし、ここも興味あれば本書を読んでもらえればと思う。

 

 

 

さて、このブログのタイトルでの後半部「ソニー流シックスシグマ」。もう何年も前に”シックスシグマ”が、日本でも大きく話題となった。導入した企業は、アメリカでは、GEとかモトローラが代表格。日本では、東芝ソニーが導入し、雑誌や新聞で大きく取り上げられた。

ソニーの場合が半導体事業部導入で、個人的に、ソニー半導体と聞くと、シックスシグマが思い出された。しかも当時、GEでの本家?シックスシグマをそのまま適用したわけではなく、ソニー流にアレンジしたとの話が多かった。講演等も少なくなかったと思う。昨今良く言われる「テーラリング」を実践してたと言っても良い位である。

 

逆に、以前ほどシックスシグマを目にする機会が無く、前述の企業で、シックスシグマが数年に渡り導入効果があったのか気になっていた。そして、テーラリングで対応したと言っても良い「ソニー流シックスシグマ」の方が、効果が出たのか気になってた。今回の「ソニー半導体の奇跡」で、その辺りに触れているかと気になって読んだ。本書で東芝との関係に関して所々書かれており、同じようにシックスシグマを導入した2つの企業を対比的に考えられるかもと気にしてた。個人的に、そのまま導入した東芝と、自社流にアレンジしたソニーとを対比できるかもと思ってのこと。

 

しかし、そんないきさつもあって「ソニー半導体の奇跡」でシックスシグマ に関して注意して読んだ気がするが、それらしき記述が見つからなかった。残念。

 

ならばと、ネットで調べたが、短いニュースやそれに近いネット記事は少し見つかった程度。また学会誌等での論文の類で残っているのを目次レベルで目にした。数年とか10年を超えて、成果まで言及するのはネットを含めて難しいのかもしれないと感じた。

 

なおネット上で、ソニー流シックスシグマに関して、それなりのボリュームだったのは以下の2つ。

xtech.nikkei.com

2004年掲載となっている。3回掲載としてるが、リンク先が雑誌の目次で、記事自体の関係が今一つと思えた。

 

xtech.nikkei.com

 こちらは、3回としててリンクもあるが、ネット上には上下の2つしかないように思う。2014年掲載となっている。

 

 この2つの記事は、実際の中身は(当時の)ソニーの人によるもの。掲載が10年違うが、著作時の違いなのか、書下ろし等のように構成等を少し変更した後の日付なのか余り良くわからなかった。3回と書かれてるのに上下しかないなどの混乱とか、シックスシグマに関して自分の理解が浅すぎるのが理由かもしれないが。

 

なお、ネットでだったかフランクな勉強会でだったか、「ソニー流シックスシグマ」は、ソニーのQC活動をベースにして用語の類と補足的なものをシックスシグマに合致させたと聞いたような気がしてた。そういった情報がネットに残ってないか色々調べたが、なかなかヒットしない。本を読み終えた後で、この調べにやたらと日数がかかった。

その調べの間に、ソニー半導体の広報誌みたいなのがネットにあって、上の2つのネット記事よりもフランクに述べられていると感じたものがあった。その時ちゃんと保存しとけばよかったが、ソニーの組織変化の関係と思われるが、直近ではそれも引っかからず。今となっては、両方とも、こちらの勘違いかな~と思えている。

 

 また、「リーンシックスシグマ」なる考えもあるようで、複数の本が出ている。

 

 右側の日本規格協会のものをサラッと読んだけど、そもそもシックスシグマへの理解が深くないせいか、手法としてよく理解できなかった。ネットとかで調べると、最近でもぽつぽつとセミナーみたいなのがあるようで、実践してる所や、実践しようとしている所があるのかもしれない。

 

 

ソニー半導体の奇跡」を読んで、10年とか20年あるいはそれより長いスパンで、企業の栄枯盛衰について思いを巡らすのは悪くないと感じた。そして、社内改革とか製品ポートフォリオの在り方、そして変革のためのツールをテーラリングを絡めて考えるのは有益と考える。まっ懇親会などで機会あったら、ソニー半導体でのシックスシグマって結局どうなった/どうなってるかを、話題にしてみようと思う。

 

 

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